0.2005年12月20日の判決について
今回の禁煙タクシー訴訟の、判決文の論旨についてお伝えします。
まず、原告側が求めていた請求(損害賠償請求)は全て棄却されました。
その理由として、裁判所は
1.原告が規制権限の根拠として主張した各法律・条文は、(受動喫煙防止の)規制権限の根拠とはならない。
2.国が(受動喫煙防止の)行政指導しなかったため損害が発生したという原告の主張は、行政指導とは相手方(タクシー事業者等)の任意の協力によってのみ実現されるという性格を考えると認められない。
をあげました。
その一方で、裁判所は
1.タクシー車内では分煙が不可能。
2.狭い密閉された車内で、乗客の吸ったタバコの副流煙を恒常的に吸わされる事による、健康への影響は看過できない。
3.タクシー事業者は、タクシー乗務員を受動喫煙の害から保護する義務を負っており、そのためには禁煙タクシーの導入・普及が望ましい。
4.タクシーは、他の公共交通機関の禁煙化に比べて著しく遅れている。
5.禁煙タクシーの普及は、競争が激しいタクシー業者の自主性に任せていたのでは、早急な改善は困難であるため、国による適切な対応が期待される。
6.タクシー利用者の一般的な乗車時間や利用頻度を考えると、全面禁煙化しても利用に支障を生ずるとは考えにくい。
7.禁煙タクシーの利用を望む利用者のことを考えると、タクシーの全面禁煙化が望ましい。
との判断をしました。
原告側は損害賠償は認められなかったものの、裁判所の判断から「実質勝訴」と判断し、控訴を見送る予定です。また、今回の判決が、職場で受動喫煙の害を受けている方達を救済する際の法的根拠となることを期待しています。
今回の判決は、タバコの害に対する世論の高まりに後押しされたとも考えられます。当裁判を支えていただいた方々をはじめ、過去から現在にかけて、禁煙・嫌煙運動を行っていただいた方々にも感謝をしております。
タクシーの全面禁煙化はようやくスタートしたに過ぎません。今後も「禁煙タクシー」にご注目ください。
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1.「禁煙タクシー訴訟」とは
2004年7月22日、タクシー乗務員3名と利用者23名の計26名が、狭いタクシー車内の全面禁煙化を願い、国(国土交通省、厚生労働省)を相手に東京地方裁判所へ、提訴しました(安井幸一原告団長は、運送約款の改定を申請し、日本初の禁煙車を実現した乗務員)。
タクシー乗務員の肺がん死亡率は一般の2倍以上です。タクシー車内の喫煙は、大都市の交差点より有害物質が濃く「乗務員と乗客の健康被害は深刻」と医学者は強く警告しています。
訴状の内容はこちら(PDFファイル(86KB))。
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2.原告団長 安井幸一の陳述
(一部抜粋)
当時(昭和28〜61年)は、1乗務50人以上の乗客を運び、30人前後の客が喫煙する状態、一人が2〜3本喫煙することも多く、一日の乗務で40〜60本の副流煙を50センチ内の至近距離で吸入させられていました。
換気は大切との信念から常に窓は少し開けていましたが「寒いから窓を閉めてくれ」と言って喫煙を始める客が多く、一酸化炭素の充満による健康への影響を懸念していましたが、俺は若いし健康には自信があるから、自分が喫煙しなければ大丈夫だと言い聞かせていました。
しかし、運転手となり15年を過ぎた頃から、乗客に喫煙されると喉や目に強く異常を感じるようになってきました(特に冷房機を使用するようになってから、まぶたが脹れ痛む)。
1986年(昭和61年)2月、基本料金程度の時間なので喫煙されるなら窓を開けて下さいとお願いしたことにトラブルとなり、法律でタバコは吸えることになっていて禁煙タクシーは禁じられているとしてとして「接客態度違反」とされたことは前回の陳述書に詳しく述べたところです。
(タクシー近代化センターは)「我々は運転手の健康がどうだ、こうだなど聞きたくない。お客さんはタバコの好きな運転手に乗れば気分を害さなかった。タバコ嫌いな運転手は迷惑だ」との言葉でした。
乗務員の至近距離で喫煙を容認する文言は、非喫煙乗客の不快、安全を担う運転手が毒性の煙により目をはじめとする急性症状により、集中力をそぎ安全運転を危険にさらす行為ゆえに、および、健康被害が予想される事柄だけに行政が最も厳しく規制する作為義務があると思えます。
陳述書の内容はこちら(PDFファイル(4.4MB))。
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3.裁判の経緯
2004年2月12日
安井幸一氏と平田信夫氏が、国土交通省自動車交通局へタクシー禁煙化要望書面を提出。同3月15日要望却下の電話回答を受ける。
2004年4月14日
安井幸一氏と平田信夫氏は、総務省行政評価局へタクシー禁煙化の要望書面を提出。同7月20日要望却下の回答を文書で受ける。
2004年7月9日
財団法人東京タクシーセンター(近代化センター)へ受動喫煙に対するタクシー業界の対応について、その現状を明らかにするため、照会を請求。同8月17日回答書が出される。センターは、タクシー利用者の喫煙について法的解釈をする立場でないと回答。
2004年7月22日
東京地方裁判所に、国家賠償請求事件として、国を被告とし、26名の原告で提訴。
2004年9月14日
第1回口頭弁論。原告安井幸一らが、口頭陳述を行う。
2004年12月14日
第2回口頭弁論。
<原告>
・準備書面(1)を提出。
求釈明については、訴状において、既に明確であるが、再言すれば、運輸・厚生両大臣は、1980年以降、規制権限を行使して、タクシー車内の全面禁煙を、標準運送約款で策定すべきであったと主張した。
<被告>
・準備書面(1)を提出。
原告の訴状について、反論。
2005年2月15日
第3回口頭弁論。
<原告>
・準備書面(2)を提出。
被告の反論が、単なる形式論であり、受動喫煙の被害を軽視した内容であるとして、失当であることを主張。
2005年4月19日
第4回口頭弁論。
<原告>
・陳述書を提出(第一回)。
2005年5月17日
第5回口頭弁論。
<原告>
・準備書面(3)を提出。
旧厚生大臣と旧労働大臣の責任原因については、訴状の通りであるとし、改めて敷衍(ふえん)した。
・陳述書(第二回)、識者2名の意見書を提出。
2005年7月15日
第6回口頭弁論。
<原告>
・陳述書『JR西日本 福知山線脱線事故にみる行政権について他』を提出。
・陳述書『タクシー禁煙化に向けた厚生労働省の監督義務について』を提出。
<被告>
・準備書面(2)を提出。
原告の主張に対し、具体的な規制権限の根拠がないと反論。
2005年9月26日
第7回口頭弁論。結審となる。
<原告>
・著名人の禁煙タクシーへの賛同署名を提出。
・アンケート調査に基づく意見書を提出。
・陳述書『1970年代と1980年代の喫煙に関する書籍から考えられる国の責任』を提出。
・他、陳述書を原告2名より提出。
2005年12月20日
請求棄却で原告敗訴。しかし、裁判所の判断から「実質勝訴」と判断し、控訴しない予定。
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4.禁煙タクシー訴訟のチラシ
当裁判を広く知っていただくため、タクシー乗務員さんを中心に、チラシを配布しています(計2,400枚以上)。
チラシ(表)の内容はこちら(PDFファイル(34KB))。
チラシ(裏)の内容はこちら(PDFファイル(10MB))。
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チラシ
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5.禁煙タクシー訴訟を支える会
当裁判を支えていただいている、「禁煙タクシー訴訟を支える会」を結成していただきました。会費は1口1,000円で、複数口可能です。また、カンパもお待ちしております。
郵便振替口座番号 00270-4-131175 口座名義 禁煙タクシー訴訟を支える会
当会事務局 〒102-0072 千代田区飯田橋2-1-4 九段セントラルビル203
※当センターでは「禁煙タクシー訴訟を支える会」への会費・カンパの送金を代行いたします(当センターが手数料等をいただくことなく、全額「支える会」にお支払いします)。ジャパンネット銀行がご都合のよい方は、こちらへご入金ください。
なお、誠に申し訳ありませんが、お振込み手数料もご負担いただきたく、よろしくお願いいたします。
ジャパンネット銀行 本店営業部(ホンテン・店番号001) 普通預金 4591665
タバコ問題情報センター 渡邉文學(タバコモンダイジヨウホウセンタ- ワタナベフミサト)
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6.過去のタバコ問題関連訴訟
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